パドリング考(一応おすすめ)

March 11, 2008

パドリング考 最終回

パドリング考も一応最終回です。(たぶん)

我ながらよく書きました。
まとめとして安全対策を書こうと思ってましたが、.....

○安全対策

いろいろ考えましたが、ひとことで「ここまですれば大丈夫」と言えるものは何もありません。
あらゆる状況を想定し、自信が無いときは出艇しない「勇気」が一番大事です。

いくつかトラブル事例を挙げておくと
 ・テトラなど、危険な人工物への接触
 ・潮流や風により沖に流される
 ・動力船との接触
 ・波などが原因で転覆による艇からの離脱
 ・パドルの流出

まだまだあるでしょう。いろんなことを想定し数え上げたらきりがありません。
 霧で方向を見失ったり、コンタクトレンズ無くしたり、毒のある魚に刺されてしまったり、些細なことから大きなトラブルに結びつくこともあります。場所や時間、季節などの状況によって想定事項は様々です。

 死に至らないようなトラブルでは上陸・出艇時に波で転覆し、釣竿破損や釣具流出ということはよくあるようです。これも被害甚大ですよね。
漕ぐこと自体に不安があるときは、まずは釣具などの荷物を載せない状態で一通りのことを練習してほしいと思います。
寝不足や体調不良っていうのも、トラブルの原因になることがあります。釣りするのに朝が早かったりするので、これもよくあります。

カヌー一般のトラブルについてはカヌーライフにトラブル例などがあり、とても参考になりますので、読んでください。

かく言う私もカヤック始めた10年以上前に一度だけ「死んじゃったかも」っていうトラブルがありました。
「何とかなるだろう」という安易な考えで「一人で」川に漕ぎ出したのも原因の一つです。

ソロで出るとリスクは格段に高まります。
慣れないうちは必ず誰かベテランの人と出て欲しいものです。

とにかく、安全で楽しいカヤックフィッシングライフにしたいですね。

| | Comments (7)

March 10, 2008

パドリング考 10回目

10回目は

フィッシングカヤックのウェアについて書こうと思います。

何を着て漕いでも、まぁ自由なんですが、「安全性」「快適さ」を求めるとそれなりなものになります。
カヤックフィッシングのウェアにはカヤックのウェアがそのまま応用でき、快適に釣行出来ると思います。
既にカヤックフィッシングしてる人は読む必要が無いですね。これからカヤックフィッシングを始める人のために書いておきます。

間違っても、ジーパンにTシャツでPFD無しって人はここを読んでる中にいないと思いますが、川でもいるんですよ。
ヤフオクあたりでビニールのボートセット買って、何の知識も無く川を流れていき、トラブルを起こす人が....いるんですよ。特に夏休み

ウェアは多少のことを我慢すれば、今 持ってるものでも応用できます。

「基本」は泳ぐことを想定し、水を吸って重くならないこと、あとは気温、水温、風などの状況に応じて、暑すぎず、水に浸かった場合もその後、寒すぎないことですね。

なので、素材は綿はNGです。ナイロンはOK
ジーンズはNG、ジャージはまぁOKって感じですね。
自分で漕いだ飛沫を多少浴びることになるので、合羽などを着ると良いのですが、動くと蒸れますので、防水通湿素材で.....となると、結局それなりな物になっちゃいますが快適にパドリング&釣りができます。

カヤック用のフルドライを着る人が多いようです。やや高いですがアウターはこれでかなり良いです。あとはインナーを状況に応じて決めれば良いですね。インナーもカヌー用のものは高いですが、濡れても冷たさを感じにくい素材だったり、通気性など性能も良いです。ちなみにフルドライとは言っても、落水したら手首や首などからは多少は水が入りますので、インナーが綿のシャツやジーパンでは若干問題ありです。(帰りはちょっと濡れた状態になる可能性があります。)

個人的にはフルドライは着脱ぎがとても大変なのと、そもそも持ってないので、上下セパレートのドライパンツ&ジャケットを着ることが多いです。上下別々だとトイレなどは楽ですし、状況に応じて上着を半そでにしたり、下を短パンにしたりとかいろいろ応用が効きます。シーカヤックなどのツーリングジャケットは首にガスケットが無いので体温調整もしやすく便利です。この辺の快適さは落水したときとトレードオフになりますので、沈する可能性が高い方にはおすすめしません。

「基本」通りだと夏は海パン1枚でもいいですが、カヤックの上は水の照り返しもあるので想像以上に日差しが強いです。
夏の暑い時期でもラッシュガードぐらいは着たいですね。

PFD必須であること以外は基本は自由だと思いますので、状況に応じて、いろいろ工夫してみてください。

| | Comments (2)

March 09, 2008

パドリング考 9回目

パドリング考 9回目は波を利用した漕ぎ方です。

○波を利用した漕ぎ方

「漕ぎ方」っていうのとはちょっと違うかもしれませんね。

急に風が強くなり、波が高くなると言うのは海ではよくあることです。
フィッシングカヤックを始めた季節が冬と言うこともあり、最初の3回の釣行で3回経験してます。(笑)

こんな経験をしないに越したことは無いのですが、自分のスキルを十分に理解してるつもりですし、あらかじめ予報をしっかり見ても、天気の急変を読めなかったんだから仕方ありません。(冬に出るって事は急変を多少覚悟してる部分もあります。)

そんな時でも、あわてずに落ち着いて漕ぐための基礎知識として波を利用した漕ぎ方「波がある状況での漕ぎ方」を覚えて欲しいと思います。

波がやや高い時にカヤックを漕ぐ場合はいくつかのセオリーがあります。
まずとても大事なのは「波に対して平行に艇を向けない」ということです。つまり、真横にならないと言うことです。
カヤックを含めて大きな漁船でも、船は前後方向に転覆することは余程の状況でなければ まずありませんが、左右に対しては比較的簡単にひっくり返りますので、波の力を真横から受けないためです。当たり前な感じですね。

もう一つ大事なことは「漕ぐのを止めない」ことです。スピードを失うとバランスをとるのが(ほんの少しですが)難しくなります。自転車で進んでる時と止まってる時とでどちらがバランスをとりやすいかって言えばわかってくれるでしょうか。実際には横幅もあるので止まっていても自転車ほどバランスとりにくくは無いのですが、推進力があったほうがバランスがとりやすいです。

良くないのが、波で「グラッ」と揺れた時に思わずパドルを上に上げてバンザイしてしまうことです。
ある程度のスキルも必要ですが、スカーリングが巧くできるぐらいの人でしたら、水中にパドルが入っていればそれでバランスをとれます。

波を正面から受ける場合(沖に向かう場合)は波にタイミングを合わせてしっかり「波頭をパドルでキャッチ」し、乗り越えてください。波頭をキャッチするのもセオリーの一つです。波頭は位置エネルギーが最大のポイントですから、水の動きとしては止まった状態です。(これから下に動きますが)しかも沖に向かう場合は前から後ろに進んで行きますし、一番近い水面ですから、これほどキャッチ&ストロークしやすいポイントはありません。

波に後ろから押される場合(岸に向かう場合)は波と直角で無い場合はスターンを押されて艇は横を向こうとしますので、横向きにならないためにも こまめにスイープを入れて向きを修正してください。
かといって波と直角だと長い艇はバウが水中に刺さってエンダーするかもしれません。
やや斜め向きに、横向きにならない様に修正しながらというのがベストかもしれません。(フィッシングカヤックで実験してないので分かりませんが、きっちり直角よりは安心して乗っていられると思います。)

また、波によって押されるために艇のスピードは速くなったり、遅くなったりします。それほど波のタイミングにあわせて漕ぐ必要は無いですが、スピードが無い状態でいきなり速くなるとバランス崩しやすいので、スピードに差がでないように遅くなったときはよりしっかり漕ぎます。


こんな状況を想定してみます。
沖から周期的に波・うねりが入ってきます。
風はやや沖から陸に吹いていますが、それほど強くありません。(遠くに台風や強い低気圧がある場合はよくある状況です。)
行きたいのはやや横方向です。

Photo

このような状況でどうするか、前回のフェリーグライドでだいたい予想がつきますね。
こういうときはまっすぐ上陸ポイントに向かわず、やや陸方向、行き過ぎたようなら、やや沖方向という感じで上陸ポイントに向かいます。陸に向かうときは波も押してくれるのでちょっと楽できるかもしれません。
注意するのは向きを変えるときです。先ほども書きましたが、波に対する基本は波と平行にならないようにすることなので、一瞬、横を向くことになりますので、そのタイミングで波を受けないように波が来ないタイミングで向きを変えます。

ちょっとマニアックな内容だったでしょうか?
こんな状況に陥らないようにするのが理想でしょうね。

| | Comments (6)

February 26, 2008

パドリング考 8回目

パドリング考 8回目は

流れを利用した横移動(フェリーグライド)です。

速い流れ(潮流)で漕ぐことはそれほど多くないと思いますし、それほど艇のスピードも速くないフィッシングカヤックで速い潮流を漕ぐのは危ないのでやめた方が良いのですが、次回の「波を利用した漕ぎ方」などでの理解を深めるためにも基礎知識としてフェリーグライドを覚えて欲しいと思います。

川では対岸へ渡るためにとてもよく使う基本的な技術です。
では海では?....河口を渡るときには使えますね。実はそれ以外でも、とても便利に使えます。

風や潮流や波がどのように艇に影響を与えるかを理解できて、フェリーグライドを理解していれば...ですが。
次回はその辺に触れますので、頭に留めておいてください。

○フェリーグライド

まず、正面から流れがあるものとします。(上から下への赤矢印)水の流れでも、風の流れでも、とにかく漕がないでいると下のほうへ艇が流されていく自然の働きです。
その流れに対して30度とか45度とか角度をつけたほうへ艇を直進させてみます。(青矢印)

1

それぞれの矢印は「流れの速さ」と「艇の速さ」ってことにしておきましょう。
艇はどっちへ進むでしょうか?
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・
                ・


正解はそれぞれの力を合成した方(黒矢印)です。

2

なんかどっかで習いましたよね。物理かな?
ちょっとイジワルして矢印をずらして置きましたが、重ねると分かりますよね。
思い出してもらえましたよね。

実際には風の流れなどは難しい「読み」の部分もありますし、自分が漕いでるスピードは目標が無いとわかりづらいです。漕ぎのスピードが遅くて流れが強いと、多少は横に進みますが下のように押し戻された感じになります。

3

こうなると 行きたい方向とは違う方に押される感じなのでちょっとビビると思います。


では、実際に河口を横切ることを仮定します。(実際には流れは一様ではなく、もっと複雑ですが。)

フェリーグライドを理解出来てるか出来てないかでルートが違ってしまいます。
Aはゴールにスムーズに着けますが、Bは同じ漕ぎの速さなのにまっすぐゴールに向けて艇を進めたために流れに押されて沖に出てしまいます。

4

Bの方が黒矢印が長い(つまり速い)ので得した感じもしますが、流れの陰になったところで戻ってこなくてはなりませんし、実際には流れに出たところで行きたい方とは全然違う下側にバウを向けられるのでかなり焦ります。

Aはちょっとしか進まないと思うでしょうが、流れに入るときの艇のスピードが十分にあれば、ほとんど漕がずに右スイープだけで流れがカヤックを対岸に運んでくれることもあります。(あくまで感覚の話ですが)

もうちょっと例を書いておきます。

湾から岸へ戻るときに急に風が強くなったとします。青矢印は先ほどと同じように艇のスピード、赤矢印は風で押し戻される速さとします。岸寄りはやや風が弱めですが、海上は強い陸からの風(オフショア)です。

こんなときは(遭難しないようにあきらめずに頑張って漕ぐこともとても大事ですが)、強引にまっすぐゴールに向かっても無駄っていうことを仮定します。風のほうが強いので沖に流されてしまいます。(という例ね)

多少、誇張した例ですが、こんなときに流れを利用して横移動「フェリーグライド」を理解してれば、沖に出される前に風がやや弱い岸寄りに移動し戻ることができます。

5


ちょっと「ややこしい」ことをいろいろ書きましたが、外から流れなどの力が加わる場合、艇は真っ直ぐ漕いだ方ではなく、漕いでる向きと外からの力の向きを合成した方向へ進むことだけ理解しておいてください。
当たり前といえば、その通りなんですが。

| | Comments (7)

February 16, 2008

パドリング考 7回目

パドリング考も7回目になりました。

 今回は横方向への移動です。

 他のカヤックに横付けしたい時など、横方向へ移動したい時に使います。
 そもそも直進性が強いカヤックではなかなか横に進みにくいですが、狭いポイントで前後の移動せずに真横に移動できる便利なテクニックなので覚えて欲しいです。
ドローストロークは理解しやすく比較的簡単ですが、スカーリングはちょっと難しいです。


○ドローストローク

 ドローストロークとは、横の水面をキャッチして手前に引き寄せる漕ぎ方です。注意しなければならないのは、引き寄せた後にパドルを入れたままにすると、漕ぎ終えた後でパドルの背面で水を受けて艇にぶつかりパドルを取られます(一瞬、ドキッとする状況に陥ります)ので、前または後ろにパドルを抜きます。

図の赤いパドルはブレードで水をつかんで漕ぐ部分、青い部分はスライドさせて力を使わない部分、点線は空中でパドルが移動する部分です。

Photo

 ただ真っ直ぐ横に引いてくるだけでなく、これをバウ側へ行うと横方向に移動しながらわずかにターンします(バウドローといいます)ので、斜めになった時など、艇の動きをコントロールし修正しながら横移動できます。 スターン側も同じです。(スターンドローとはあまり言わないようです。スイープとあまり変わらないからかな?)

2_2

じっくり、繰り返し、繰り返し行い、ちょっとづつ横移動します。


○スカーリング

 ドローストロークの動きをパドルを抜かずに行うことが出来るのがスカーリングです。パドルを抜いてあらためて遠くをキャッチする動作が無いので効率的です。
 理解できるといろんなことに応用できます。和船の櫓漕ぎなども理解できると思いますし、シンクロナイズドスイミングの手の動きなどはまさにスカーリングそのものです。(むしろ、言葉としてはカヤックよりもシンクロナイズドスイミングの「スカーリング」の方がメジャーです。)これが出来れば中級かな

 動作を理解しやすいようにやや大きめに書いていますが、実際に動くのは艇のほうなので、ドローストロークほどパドルの位置は変わりません。

Photo_2

 ドローストロークと同様に図の赤いパドルはブレードで水をつかんで漕ぐ部分、青い部分はスライドさせてほとんど力を使わない部分です。黒い点のあたりで軽くひねります。

 バウ側へドロー→90度ぐらいひねる→スライド →スターン側へドロー→90度ひねる(戻す)→スライド→バウ側へドロー...の繰り返しと理解すれば分かりやすいと思います。
 赤の部分は重さを感じながらゆっくり、青の部分は速く動かす感じです。

 「8の字漕ぎ」と言ったりもしますが、水をつかんで漕ぐ時間は長く、スライドさせるのは一瞬なので、ゆっくり漕ぐと8の字あるいは八の字に近くなりますが、速く・コンパクトに漕ぐとブレードの向きがクリクリ変わり、前後にチョコチョコ動くだけで、パドルの「位置」はほとんど動きません。

 キャッチした手はやや遠くを、反対の手が中心軸になるように顔の前に持ってくると漕ぎやすいと思います。
 理解できなければお風呂でイメージトレーニングすると良いです。

図解しても難しいかもしれませんね。どうですかね?

 だいたいの漕ぎ方について大事なことは今回で終わりです。足りないことがあればまた追加するかもしれませんので、コメントください。

 次回は流れを利用して横方向へ移動する方法(フェリーグライド)です。

 これも図解しないと説明しづらいので、たぶんすぐにはUPできない感じです。

| | Comments (6)

February 07, 2008

パドリング考 6回目

6回目は曲がるための漕ぎ方です。

 ラダーがあるから曲げるための漕ぎを知らなくて良いと言う人が時々いるようですが、これは大きな間違いです。しっかり艇を曲げる技術を会得してください。(それほど難しいことではありませんので)

 シーカヤックなどのラダーは艇を曲げるのにとっても便利ですが、本来、艇を急に曲げるためのものではありません。海峡など早い潮の流れをダイレクトに横切る時に、つまり、長い長いフェリーグライドをしなくてはならない時に片腕だけに掛かる負担を軽減するためにあります。(って聞いたことがあります)

 別に道具ですからどんな使い方をしても良いのですが、とても大きなデメリットがあります。それはラダーはワイヤーや紐で操作するため、トラブル(故障)が多いのです。出したラダーを曲げたまま動かなくなってしまい、収納もできなくなったらどうなるでしょうか。考えただけでもゾッとします。まぁ、シットオントップでしたら後ろに移動して収納することは出来るんでしょうけど、波が高くなったりして容易に船の上を移動できない時に限ってトラブルは起こるものです。

 ですからシーカヤックの世界でもラダーの有無は賛否両論なのです。フィッシングカヤックには無くても良いと思っています。あっても良いですし,否定まではしませんけど、ラダー無しで艇を曲げる技術だけは覚えて欲しいです。

○スイープストローク

 向きを変えるときに使います。ポイントは「艇の遠い方を」「前からしっかり後ろまで」漕ぐことです。
右方向へ艇を曲げるとしたら、右のワキをしめて、左手をしっかり伸ばし、「前からしっかり後ろまで」「艇から遠い方を」半円を描くように漕ぎます
目線は進む方向、つまり右方向です。

 メリットは推進力を(比較的)失わずに方向を変えることができます。
 デメリット?フィッシングカヤックは直進性が強いのでしっかり遠くを漕がないと曲がりにくいです。長い艇の場合は特に曲がりにくいかと思います。

フォワードストローク同様に艇にダイレクトに力を伝えるために「足で蹴ること」がとても重要です。足で蹴るか蹴らないかで艇の動きが違うことをフォワードストローク以上に実感できると思います。漕いでる側の足で蹴ります。

 漕いでるときや漕ぎ終えた後に艇がグラグラしないように気をつけます。グラグラするとせっかくの旋回動作が失われてしまいます。あくまで艇がスムーズに動くように心がけます。

 ちょっとおまけですが、フォワードストロークと組み合わせると、リズムをあまり崩さずにスピードを比較的落とさないで目的の方へ進めることが出来ます。
つまり、左だけ艇より遠くを漕ぎ、右は普通にフォワードを漕ぐ....を繰り返すと直進しながらゆっくり旋回し目的の方向へ向かう感じです。
 この場合は「遠い方を漕ぐ」基本は同じですが、「前から後ろまで漕ぐ」はある程度加減する感じですね。


○バックスイープ(またはスターンラダー)

 メリットは簡単に向きが大きく変えられます。
 どんなラダーでもラダーによって推進力は失われます。つまりデメリットは推進力が失われることです。
 ですから波が高い時には、推進力が失われバランスを崩す原因となるバックスイープで向きを変えるのは若干危険です。でも、波が高くない時は大きく向きを変えられるので便利です。

 漕ぎ方は特に難しいことはありません。スイープストロークを後ろから前に行うだけです。当然ですが、パドルの背面が水を受けることになります。
 直進してる時に後ろにパドルを入れて操作するとスターンラダーになりますし、停止あるいは、後退してる状態で後ろから前方向へ漕ぐとバックスイープと呼び方は違いますが、やってることはほぼ同じと考えて良いです。

 定位置でターンしたい時はスイープストローク→バックスイープを繰り返すことにより出来ます。つまり、右方向に旋回するときは左でスイープ、右でバックスイープという感じです。
 もちろんスイープストロークだけ、あるいはバックスイープだけでも定位置ターン出来ますが、スイープストローク→バックスイープとより効率的です。


 このほかにバウラダー(パドルを前方向に入れるラダー)やリーニング(カヤックを傾ける)などカヤックにはたくさんの技術もありますが、直進性が強く、速度もそれほど速くないフィッシングカヤックでは実用的ではないのでここでは割愛します。

 リーニングぐらいは試しても良いかもしれませんね。しっかり艇が直進した状態でどちらかのお尻にしっかり体重をかけて艇を少し傾けてあげると、どっちかにちょっとだけターンします。(どちらにターンするかは艇の種類によって違いますが、だいたいのフィッシングカヤックはバイクと逆の方かと思います。)艇自体の左右のバランスがしっかりしてるので、難しいし、無意味かもしれませんが....

 次回はスカーリング(予定)ですが、これは図を書かないと説明しづらいのと、書いてる暇がちょっと無さそうなのでしばらく先になるかと思います。

| | Comments (7)

February 01, 2008

パドリング考 5回目

前置きが長かったのですが、やっと本編に入る感じですね。

 以前も申し上げましたが、ここで書くことは漕ぎ方のルールではありません。漕ぎ方は自由ですが...

 既にシーカヤックやリバーカヤックなどのスクールでここで書いてあることと「違うことを教わった」と思われても、教える人や考え方も違うので、それもひとつの考え方だと思ってください。自分で理解し、自分に合った漕ぎ方を会得して、その中のひとつの参考になればと思ってます。

○フォワードストローク

 前に進むための漕ぎ方で、最も基本的で簡単だと思われますが、最も重要な漕ぎ方のひとつで奥は深いです。
 速く漕ぐことも必要ですが、レースではないので出来るだけ効率よく(楽に・そこそこ速く)しっかり漕ぐことが今回の目標です。

では具体的な話をしていきます。

 効率よく艇を前に進めるために大事なことは、漕ぎ方自体も大事ですが、艇を「出来るだけ」前後・左右に揺らさないということです。

 せっかくパドルで水をしっかりキャッチし、ストロークできたとしても、前後・左右に艇を揺らしてしまっては常に漕いだ力を左右に逃がし、前後のゆれにより艇でブレーキを掛けてる事になります。艇の長さがスピードに影響するのはこのためです。

 とはいうものの、左右のパドルで同時に漕いでるわけではないし、パドルで前→後に漕ぐわけですから、どんなに理想的な漕ぎでも前後左右に揺れます。ですから「出来るだけ」で良いので意識をしてください。結構 大事なことです。


次に、さらに具体的な「漕ぎ方」について、ここでは2種類挙げておきます。覚えるのはどちらか1つで十分ですが、長い時間漕ぐ時は漕ぎ方を変えると疲れも軽減できますので、使い分けられた方が良いかと思います。


①てこを使った漕ぎ方

 いわゆる普通のフォワードストロークで、だいたいのリバーカヤックスクールなどでは最初に習う漕ぎ方です。どんなカヤックにでも応用できる良い漕ぎ方です。
 まず、水をキャッチした方の手(前に伸びた手・通称:引き手)を真っ直ぐ伸ばし次にキャッチする方の手(押し手)側をしっかり押します。通称、押し漕ぎとも言ったりもします。
 押し手は耳の前ぐらいからバウ(艇の前方)方向に向かっておおむねまっすぐ押します。引き手は「押し」が終わってからブレーキにならないように軽く畳んで耳の前に持ってきます。すかさず反対側で次のキャッチをして後は繰り返しです。

 体をあまり前後に動かさない程度で出来るだけ前の方をキャッチします。

 疲労を最小限にし、力を入れるポイントにメリハリをつけて漕ぎます。 つまり、キャッチした方の手を引くよりも押す方の手を意識し、しっかり力を入れる(押す)ということで、パドルの移動距離は「ほんのわずか」ですが、てこを利用してるので、より小さい力で大きな推進力を得られることが出来、前後の艇のゆれが少なくおさえれれば、あとは惰性で進んでいき、パドルを押す重さは漕ぎ出しよりもだんだん軽くなってくると思います。

 このとき、(というか、どんな時も)あまり手元を気にせず漕げるようになることを意識してください。

 やや余裕があるようなら、引き手も畳むだけではなく軽く引いても良いですが、主役はあくまで押し手です。


②背筋など体全体を使った漕ぎ方

 ①とはまったく異なる考え方です。引き手でしっかり引いてきます。ただし、両方の腕は一切曲げません。肘を伸ばしたまま肩・腰で引いて、反対の肩で押します。例としては、「開かないドアを思い切り引っ張る時に腕を真っ直ぐ伸ばして足の力でドアノブを引っ張る」イメージです。

 静水で行うカヤックレーシングや、ワイルドウォーターと呼ばれる川の一定区間を一気に漕ぎ下るような、キールラインがしっかりして直進性が強く、なかなか曲がらないような艇で有効に使える漕ぎ方です。フィッシングカヤックもほぼ同じような特性なので有効です。逆に旋回しやすい艇では真っ直ぐ進みにくいので使いにくい漕ぎ方です。

①の漕ぎと同様にパドルの移動距離は肩が前後に動くぐらいでしかないのですが、体の中でかなり筋力量の多い背筋・腹筋・胸筋を使ってアグレッシブに漕ぐことができます。背筋・腹筋・胸筋が付いてきて、漕ぎ方に慣れると腕の曲げ伸ばしよりかなり速くて楽です。腕を引く力と背筋力がどのぐらい違うのか量ったことがある人でしたら納得してもらえると思います。


①②といずれもパドリングと同じぐらい重要なのは足で蹴ることです。足で蹴ることによりダイレクトに艇に力が加わります。カヤックのストレッチャー(足で踏む部分)はこのために付いています。ストレッチャーの位置はややひざを曲げた楽な姿勢になる位置が標準的です。(②の漕ぎ方の場合は若干足を伸ばした状態の方が腰から動けます)

 蹴るのは通常、漕いでるほうの足を蹴ります。つまり、右の水をキャッチしてたら右足で蹴ります。
艇を真っ直ぐ進める場合はどっちでも良いので、とにかく蹴ることが大事です。
 次回で説明しますがターンする(艇の向きを変える)時にも漕いでるほうの足を蹴りますので、常に漕いでるほうの足を蹴るように心がけると体が覚えやすいです。

※フォワードストロークの時に逆足で蹴る方法もあるのですが、難しいわりに効果も微妙なので割愛します。

「効率的に漕ぐ」と言うと体を前傾して前の方からキャッチし、後傾するまで引ききるイメージがあるかもしれませんが、以上の説明でこれが「ちょっと間違いである」ことが分かっていただけたかと思います。前傾、後傾するとストロークは長いので、漕いだ瞬間はとても速いですが、前後の揺れが大きく艇の進みに伸びが無くなるので長い時間漕ぐには効率が悪く疲れる漕ぎ方なんです。

①の漕ぎ方と②の漕ぎ方を組み合わせることも出来ますが、まずはそれぞれを使い分けてみてください。

どうでしょうか?図解しないで分かってもらえるでしょうか??
図を追加した方が良さそうですね。暇な時があったら考えます。(絵は下手なので)

| | Comments (2)

January 30, 2008

パドリング考 4回目

一生懸命、書いてる割にはアクセスは大して伸びない今日この頃です。(笑)

4回目は乗艇と再乗艇です。

○乗艇

 どんなカヤックでも一番「沈」(転覆)しやすいのが乗るときと降りる時です。
シットオントップはスプレースカートをする必要が無いので、下半身が濡れても問題ないウェアでしたら、砂浜の場合は波打ち際を避けて、ひざ上ぐらいまでの深さまで艇を進めてから乗る方法がおすすめです。

 陸の上から乗って手やパドルでズルズル進める方法もありますが、シットオントップは比較的重く、さらに上に乗るとなかなか動かないのでもたもたしているうちに波でひっくり返されてしまうのを避けるためです。

 逆に、降りる時も腰ぐらいの深さで降りてしまうのも波の返りで転覆させられないようにすることが出来ます。

※干潟など、遠浅の砂浜でエイが生息する水域では不用意に水の中を歩くと毒針で刺される可能性があります。転覆するリスクとどっちのリスクが高いかは状況により判断してください。

○再乗艇

 ここで言う再乗艇とは、一度上陸して再度乗り出すと言う意味ではありません。
 水上で何らかのトラブルにより転覆した場合に水上で再度艇に乗る方法で、とても大事なことなので、実際の漕ぎ方に入る前にあえて書いておきます。

 とっても参考になるHPがありましたので紹介しておきます。

「TEAM N.W.」第五章・怖くない!“沈脱……そして再上艇”マニュアル

カヤックフィッシングで有名なHPなので既にご存知だとおもいますが、あえて紹介です。
写真もあり、とっても分かりやすいので、

 いざというときに慌てないように釣具などの荷物を積載しない状態で、暖かい時期に再乗艇を試してみてください。

急に深くならない砂浜などで足が着かないぐらいの深さで転覆させた状態から、艇を起こして再度乗るだけです。
エスキモーロールやTXレスキューなどに比べればとても簡単ですが、意外に難しいことに気づくはずです。自分の目線ぐらい、つまり、1.5mぐらいのコンクリート壁によじ登るぐらいの感じでしょうか。

 乗り込むときは体全体を浮かせてホフク前進の様にバタ足しながら乗り込むと比較的簡単です。

 上記のHPにも書いてありますが、波があるときは横から乗るよりも、前または後ろから「またがるように」乗ったほうが再度転覆するリスクは減ります。

練習の時もPFDは必ず付けましょう。

 今回は軽く手抜きですね。
 次回はやっと本編です。でも、期待するほど大したことは書いて無いですが。

| | Comments (5)

January 24, 2008

パドリング考 3回目

3回目は

○水をキャッチする

 です。前置きが長くてすいません。でも、大事なことなので。

 前回の「パドルの持ち方」までは理解できたかと思います。
 今回は水をキャッチすると言うことで、まあ、これも特別なことは書いていません。

「パドルの持ち方」の通りにすると右のブレードは自分の方を向いてると思いますので、右を漕ぐ時はそのまま引いて漕ぎます。(後日出てきますが、引くと言う表現はちょっと正しくないのですが、まぁ、今のところはこれで)

 では左は?左を漕ぐ時は左手に輪っかを作るようにしてシャフトを滑らせて左のパドルが自分を向くように「右手で操作」します。これをフェザーリングといいますが、フェザー角が45°ぐらいでしたら両手を握ったままフェザーリングをあまり意識する必要が無いかもしれません。0~30°ではまったく意識する必要もありません。逆にしっかりした75~90°のフェザー角ではフェザーリングを意識しないと漕げません。

じゃあ、0~30°が良いのかというと、そうでもありません。向かい風が強い状況では低いフェザー角だと空中に出してる方のパドルがもろに風を受けることになりますし、自然な漕ぎでも多少は角度が付いてしまいます。しっかりパドルを立てて漕ぐ場合だと60度ぐらいが自然な角度かなと思います。

シャフトは強く握る必要はありません。むしろ「握る力」は入れないぐらいの方が無駄に疲れなくて良いです。

では、どのぐらいの速さ、強さでストロークすれば良いのか? 説明が難しいですが、水の重さをしっかり感じるぐらいです。
まずは力いっぱい漕いでみてください。腕力が強い初心者はパドルがゴボゴボ泡を立てながら漕いだりしてしまいますが、水をキャッチするところで力が逃げています。逆にパドルのキャッチが強すぎてブレードがブルブルと「ぶれて」しまい、ブレード両側から水を逃がしながら漕ぐのも良くありません。

水を掻くというよりは(理想的には)水をキャッチしたところまで艇が進むというイメージと感覚をもってもらえればパドルが余計な動きをしない方が良いということを理解してもらえると思います。

| | Comments (2)

January 15, 2008

パドリング考 2回目

○パドルの持ち方とパドル

第2回目はパドルの持ち方とパドルについてです。なので特別なことは書いてません。

 どんなカヤックでもパドルの持ち方はだいたい同じです。腕を横に水平に伸ばし、そのままひじを直角に曲げた時の手の幅が一般的な「持ち幅」といわれています。どこで聞いてもそのように教わるでしょう。

 しかし、人によって広め、狭めというのがやはりありますので、好み(楽に漕げる幅)で良いと思いますが、左右均等になる持ち幅でパドルの中央が体の真ん中になるように持ちます。

余談ですが、スラロームのトップパドラーにはターンする時と直線を漕ぐ時とで持ち幅を変えるっていうテクニックを使う人もいます。
(私はそんな器用なことは出来ませんし、真似する必要も無いです。)


 次に前にパドルを差し出すように持った時、ブレード(パドルの面)は利き手(右)側が顔と向かい合うように持ちます。
すると反対のパドル面は上か、上からやや自分の方を向いてると思います。これがフェザー角です。どうやって使うかは次回に説明します。

左利きの人もカヤックは右で操作するように覚えた方が良いでしょう。つまり右側が顔と向かい合うようにと言うことです。
これは、ただ単に左利き用のパドルを手に入れるのが難しいと言うだけですが、フェザーリング角が低めでしたら利き手を意識する必要もほとんど無いので右利きの角度で覚えることをお勧めします。


カヤックフィッシングで使うパドルは艇の幅も広いのでシーカヤック用のもので220cm~230cmぐらいの長いものが多いです。これも好みなので、身近に持ってる人がいたら、借りて使ってみると良いでしょう。同じブレードの場合、長さが長くなるとキャッチは強くなります。当然ですが、ブレードの面積が大きいほどキャッチは強いです。ブレードの大きさ(水をキャッチした時の強さ)は好みです。強すぎても扱いづらいし、弱いと思うように艇を操作できず不安です。

フェザー角は45°~60°ぐらいがおすすめです。これも好みなので、いろいろ試してみて自分の角度を決めると良いでしょう。
目を閉じて漕いだ時に自然にできる角度が良いとも言います。

「自分の好み」ってばっかりで全然参考にならないと思うかもしれませんが、だいたいこの位っていうのはありますが、ホントに人それぞれなんで。
パドルは艇選び以上にシビアなんです。釣りのロッドに近いイメージかな?

無難なのは230cm45°のナロー(狭い)ブレードでしょうね。材質はグラスのブレードがコストパフォーマンスに優れていておすすめです。しっかり漕げるようになるとちょっと固めのカーボンとの違いが分かってくるかもしれませんが、グラスとの違いはそれほど大きくは無いです。値段が高いのが難点です。

ナイロン素材のものは安いのですがふにゃふにゃして漕ぎづらいのは比べればすぐに分かります。グラスでちゃんとしたパドルメーカーのもので値段は4万円前後ぐらいします。


最後にシャフトについて、ストレートな物と「エルゴ」「パワークランク」などと呼ばれるほんの少し曲がったものがあります。これも好みです。上級者だからエルゴシャフトを使うと言うことはありません。ストレートを愛用する上級者も多いですし、エルゴシャフトは初心者にも使いやすいのですが、値段が高いのでエントリー向けのものはストレートと言うことが多いのです。
エルゴシャフトのメリットデメリットをストレートと対比してあげておくと

エルゴシャフトのデメリット
 ・生産工程の都合上、値段が高い
 ・全く同じものが生産中止などで入手できないことがある(フィーリングが変わる)
 ・重量がちょっと重い
 ・細いシャフトは作りにくい
エルゴシャフトのメリット
 ・持ち位置が分かりやすい
 ・手首や手に優しい

という感じです。

| | Comments (6)